アートをひらくNPO   2004年7月28日朝日新聞朝刊

〜大衆化 オペラ 安く・わかりやすく〜

 安くて質のいい大衆向けオペラをつくりたい。バス・バリトン歌手の岡村喬生さん(72)が、01年、NPO「みんなのオペラ」を立ち上げた。岡村さんは芸術総監督兼副理事長だ。
 東京都江東区で市民グループと96年に始めた簡素な舞台の「省エネオペラ」を発展させた。「日本のオペラは東京に偏在し、料金も高い。わかりやすい舞台を全国へ出前したい」と岡村さん。大衆化という目的をはっきりさせることで、既存のオペラ団体と共存を図っている。
 出演料を抑え人材育成につなげるため、歌手はオーディションで発掘する。指揮者など要所に一線級の人材を招くことで舞台水準を確保する。巻く前のナレーション、原語の歌の前後に入れる日本語のせりふなどで、筋を追いやすくする。
 レパートリーは「蝶々夫人」と「魔笛」。10月に東京で、飯守泰次郎さん指揮で「蝶々夫人」を上演する。チケットは最高9千円。5万円を超えることもある外来公演や新国立劇場の2万1千円に比べれば割安感がある。
 NPOの理事や顧問には俳優、元大臣、会社社長が間を連ね、会員は400人余り。この人脈で出前先を開拓、これまでに3公演実現した。「いずれは外国に」と夢はふくらむ。
 だがオペラは大勢で作る人件費の塊だけに、運営は厳しい。約1400万円の累積赤字は岡村さんが立て替えている。「でも、文化小国を脱するために僕ができることはこれしかない」
 9月には資金集めの演奏会の舞台に立つ。

(星野学)